ネットにおけるTRPG個人史について

1990年代から2010年代におけるネットにおけるTRPGに関して、簡単な文書を書こうと思います。本エントリはおそらく時間がかかると思いますので、随時加筆修正していくという形をとります。コメントいただいた指摘等がありましたら取り込ませていただくかと思います。尚、体裁がある程度まとまった段階で別のところに手直ししてアップするかもしれません。

長くなったので、[trpg]ネットにおけるTRPG個人史について(2)に続けます。

ネットにおけるTRPGを取り巻く諸環境について

1990年代から2010年代にかけての諸環境について簡単にまとめます。各項目は年表風に再整理をするかもしれません。

経済

1986年頃からの「バブル景気」が1991年まで続き、バブル崩壊後低迷しましたが、2002年から2007年は「いざなみ景気」と呼ばれる低調ながら継続的な好景気が続きました。2007年頃からサブプライムローン、2008年9月のリーマンショックにより経済環境は厳しくなっていきました。

PC環境

1995年11月にWindows95日本語版が発売され、1998年7月にWindows98、2000年WinodwsMeと版を重ねた後に別系統であったNTシリーズと2001年1月にWinodwsXPとして合流し、日本において一般家庭にまでPCが普及していく原動力となりました。
インターネットブラウザは有償ソフトだったNetscape Navigator(現在のMozillaの源流)が、1997年3月に発表された『伽藍とバザール』以降に方針転換が図られ、1998年頃にはオープン化されました。これに呼応してInternet Explorerも無償化され、誰もが簡単に利用できる環境になっていきます。

ネット環境

1995年頃にターミナルアダプタが低価格化すると時を同じくして、テレホーダイという深夜時間帯での定額制接続サービスが開始。ISDN接続が普及する。やがて2001年頃にYahoo!BB等が参入しADSLが普及し、常時接続が一般化します。

個人情報端末

1985年の通信自由化。1993年頃にポケベル利用者が急拡大したが、1995年からの携帯電話・PHSの拡大により縮小。高校生は携帯電話が持っているというのが20世紀末には一般化しました。音声通話とメール機能、カメラ機能が中心でしたが、何度かのブームを経て、2010年代にはスマートフォンという名称で様々な機能が利用できる機器が普及しはじめています。

紙媒体におけるTRPGについて

出版物
雑誌
雑誌名 出版社 刊行ペース 発行期間
ドラゴンマガジン 富士見書房 月刊 1988.3〜
ゲーマーズフィールド ゲームフィールド
Role&Roll 新紀元社 隔月→月刊 2003.6〜
GAME JAPAN ホビージャパン 月刊 2006.6〜
ゲームぎゃざ ホビージャパン 月刊 1998.8〜2006.5
RPGマガジン ホビージャパン 月刊 1990.5〜1998.7
タクテクス ホビージャパン 月刊
電撃アドベンチャーズ メディアワークス 月刊 1994.1〜1998.6
LOGOUT アスペクト 隔月→月刊 1992.6〜1995.12
コンプRPG 角川書店 隔月→月刊 1991.11〜1996.10
RPGドラゴン 富士見書房 季刊
RPGamer 国際通信社
ウォーロック 社会思想社
シミュレイター 翔企画
TCG(M:tG)

1994年頃からゲーム紹介記事がRPGマガジンに掲載され、1995年にマジック:ザ・ギャザリング(M:tG)の日本語版がHJ社から販売されるようになりました。M:tGは革新的かつ刺激的なゲームだったこともあり、当然ながらゲームが好きなTRPGゲーマたちの心を力強く掴みました。

やがてM:tG以外にも多くのTCGが国内・国外から発表され、TRPGユーザに大小さまざまな影響を与えました。中でも象徴的なのは「RPGマガジン」誌が1999年8月に「ゲームぎゃざ」誌へとリニューアルされたことです。

TRPGウォーシミュレーションゲームの中から派生的に遊ばれだし、そしてそのまま根付いたという歴史を持っていることから、「今度はTCGTRPGから派生的に遊ばれ出し、そしてそのままTRPGが廃れるのではないか」と危惧した人たちが少なからずいたと思います。

"冬の時代"

1990年代の中頃から2000年代にかけてTRPGが低迷する時期がありました。TRPG関連雑誌が休刊したりTRPG関連記事が次々と縮小され、TRPG関連の出版アイテム数が減少していった時代という側面と、実際に遊んでいるゲーマの中で「TRPGという文化」に愛着を持つ層が強い閉塞感を感じて悲観的なムードに囚われていた時代という側面があるように思われます。

この閉塞感はゲーム・フィールド社の活躍*1や『アルシャード』の出版(2002年7月)、D&D第三版の日本語訳発売(2002年12月)といった明るいニュースを受けて徐々に払拭されていきました。

ネットにおけるTRPGについて(1):ツール

メーリングリスト(ML)

メール投稿を受付、登録されているアドレスに配信する仕組み。メールというインターネット以前からある媒体を使用することから利用環境を問わないメリットがあります。スパムメールが増加してメールそのものの利用環境が変わったこと、携帯電話からは利用が難しいこと、リッチテキストなメールに対応できないこと、Spamメールの増加からノイズが増えてメールそのものの利用比重が低下したことから2010年代ではあまり使われなくなっています。

メールマガジン

登録されているアドレスに配信する仕組み。メーリングリストが利用者間の双方向な伝達なのに対して、メールマガジンは配信者から購読者に対する一方向の伝達となります。双方向性がないことから、頻度や内容が配信者のコンテンツ供給力に依存する仕組みであるため、メールマガジンの多くは徐々に配信されなくなる傾向にあります。TRPGに関するメールマガジンもこの傾向にもれず、多くが廃刊していきました。

掲示板(BBS)

パソコン通信で使われ始めた不特定多数が書き込みを行える場所(掲示板)が提供され、文字ベースで意見を交わすコミュニティツール。部分的にHTMLタグの入力補助がある、類似する話題の複数掲示板をグループ化して配置する、書き込みがされたものを周知する機能をつける、元発言に対する返信をツリー状に表現する等、様々な工夫を組み合わせた多種多様なタイプが存在しています。

TRPGに関しては、セッションを掲示板上で行ったり、遊び仲間同士で連絡を取り合うのに使ったり、TRPGを遊ぶ中で疑問に思ったり悩んだことを相談・議論するといった各種コミュニケーションに利用されています。基本的に公開されているサービスであることから、検索サイトの精度向上に伴って

Webチャット

掲示板と同様に不特定多数が書き込みを行える場所であり、定期的な画面読込みとログイン機能が付与されたリアルタイム性の強いコミュニケーションツールです。掲示板が手紙のような文書のやりとりとすれば、それよりも遥かに砕けた気軽なおしゃべり(雑談/chat)の場所として機能していました。

ブロードバンドが普及した2000年代以降は、文字だけでなく音声や画像を媒体とするもの(ボイスチャットライブチャット)も登場しています。また、2010年代にはクラウドを取り入れたクラウド型チャットサービスが新しいサービスとして提供され始めています*2

IRC

IRCとはInternet Relay Chatの略で、専用ソフトを用いたチャットシステムです。Webチャットに比べて高速・安定であり、回線速度が速くない場合でも使うことができます。また、チャットの記録(ログ)を保存する機能が専用ソフト*3にはほぼ必ず搭載されています。
IRCにはボットと呼ばれるプログラムを置くこともでき、サイコロ等のTRPGに便利な機能を補助させることができます。このため、セッション用のボットを置いたサーバではボットをチャンネルに呼ぶことで、オンラインセッションをより手軽に楽しむことが可能となります。

メッセンジャ(ICQ、MSメッセンジャ等)
Blog(はてなダイアリ等)
アンテナ・RSSリーダー
SNS(mixi等)
twitter

2010年代になって急激に普及した米国発のコミュニケーション用サービスです。140文字以内の発言(呟き)が各ユーザごとに保持され、基本的に公開されることからブログの一種(ミニブログ)として使われる。SNS的な側面も持ち、友人知人等の関心のある人を設定することで彼ら/彼女らの発言を手軽に辿る機能などを有しています。各国の著名人をはじめ、各種企業がサービスやイベント単位でアカウントを保持しているため、マーケティング等にも利用されています。

*1:初期のGF誌に漂う雰囲気は非常に切迫した印象を受けていましたが、徐々にそういう印象が減っていきました

*2:参考:ChatWork

*3:LimeChat